第80章 thunder
スーツをギュッと掴んで離れようとしない
「松田さんがいいみたいですね
残念だったな、新人くん」
千葉に肩を叩かれて、傷心の君にもう一杯奢ってあげようとそいつを連れて帰った
「ちゃんのこと頼んだわよ」
「松田さん、失礼します」
高木と佐藤も肩を並べて帰っていった
「?大丈夫か?」
「はい」
みんながいなくなってようやく背中から離れた
俺を選んでくれたことに顔がニヤつく
行くぞと手を引いて繁華街を歩いた
タクシーを捕まえて、の家まで送っていく
「ほら、しっかりしろ
鍵はどこだ?」
久しぶりにベロベロに酔っ払っている
カバンの中を探って鍵を取り出した
「入るからな」
「ん…」
こんなになるまで飲んだのはいつぶりだろうか…
も記憶がなくて不安なんだろうな
それを酒にぶつけて、酔いつぶれるなんてな
水飲んどけとペットボトルを渡した
「ありがとうございます」
「じゃ、俺帰るから…」
トンと背中にの温もりを感じる
「どうした…?」
「1人じゃ寂しい…みんなといてさっきまで楽しかったから…余計に」
新人に迫られて、困ってると思っていたが
なりに楽しかったみたいだな…
「そばにいて欲しいのか?」
「はい」
なんだよ、もう…
こっちは必死なんだぞ
を押し倒さないように、気持ちが溢れないように
なのに、そんな風に寂しいって甘えられたら…
「…」
返事はなくて…ズルズルとの身体は落ちていく
「おい、まさか…」
俺にしがみついたまま、眠ってしまった
「おいおい、嘘だろ…」
とりあえず、ソファーに寝かせて柔らかい髪を撫でた
「じんぺー、さん…ヒロくん…
いかないで」
ドキッとした、久しぶりにに苗字じゃなくて名前で呼ばれたから…
いかないでって…なんの夢見てんだ?
眠ってるのに、涙が頬を流れている
涙を拭ってソッと口付けた
「おやすみ、また明日」
鍵をかけてポストに放り込む
熱くなった顔を夜風が冷やしてくれた