第72章 Memory
「ここは?あなたたちだれ?」
頭を鈍器で殴られたような衝撃が走る
松田の事も俺の事もわからないは
怖いと泣き出してしまった
小さい子が泣きじゃくるように
看護師に部屋から追い出されて松田と廊下に佇む
「記憶喪失!?」
駆け付けた萩原とゼロにさっきの様子を伝えると俺たちと同じようにショックを受けていた
「一時的かもしれねぇだろ?」
萩原の言葉に誰も返事を返すことが出来ない
看護師から病室に入ってもいいと許可が出て
なだれ込むようにして病室へ行く
「さっきはごめんなさい…」
「、俺たちのことわかる?」
首を横に振った
みんな言葉を失っている
「俺は諸伏景光、よろしくな」
「ひろみつ?」
そうだ、と握手をするために手を差し出した
おずおずと差し出された手を握る
「俺は松田陣平」
復唱して松田の顔をジッと見つめる
「俺は萩原研二」
萩原も同じように挨拶をする
「こいつは降谷零」
目を見開いて固まったままのゼロに変わって自己紹介をすませた
「私、記憶障害なんですよね…
ごめんなさい…皆さんのこと何も覚えてない…」
自分の名前と住所、警察官だということはしっかり記憶している
俺たちのことだけがごっそりと抜け落ちていた
「ごめんなさい…」
「が謝る必要ないよ」
「でも、皆さんが私の事を心配してくれてるのが、よくわかるんです…なのに…私は思い出せない…」
聞きなれない敬語
ちょっと怯えている目
震えている手
無理もないか…知らない男4人に囲まれてるんだもんな
「また、明日来てもいいかな?」
「来てくれるんですか?」
「がいいって言ってくれたら」
「思い出したいので…お願いします」
じゃ、また明日と他の3人の背中を押して病室を出た
膝から崩れ落ちた所を萩原に支えてもらった
「おいおい…大丈夫か…」
「想像以上に堪えてるよ…」
「お前達2人は俺たちより付き合い長いもんな…ショックだよな…」
ゼロはさっきから黙ったまま
強く握り拳を作っている
「なんでがこんな目に合わなきゃなんねぇんだ…」
松田が小さく呟いた
「ちゃんに取って辛い事は忘れた方がいいんだよ
噂の事も襲われた事も忘れてるなら、そのままの方がいいんじゃないかって思う」