第62章 Mistery Train
「わぁー、SL機関車なんて初めて見たー」
はしゃぐなとデコピンされてしまう
「でも、デートなんでしょ?安室さん?」
「そうですね、頼みましたよ」
零くんと決めた偽名で呼ばれた
慣れないな…ちゃんと返事できるかな…
安室さんに腰のあたりを抱かれて用意された部屋に入った
「うわぁ、すごーい
ミステリートレインなんだよね?どこに着くか楽しみー」
「名古屋ですよ」
ネタバレはやめて欲しい…零くんはそういう所がある
ミステリーとかサスペンスとか一緒に見てたら、わかった段階でトリックや犯人を口に出す
忘れてたよ、そういう人だって…
食堂車の方へ行ってみようと手を繋いで車内を歩いていると百貨店で見た顔に火傷のある赤井さんとすれ違う
安室さんと繋いでいる手に力が入った
「どうしたんです?」
「あ、ちょっと知り合いに似てて…なんでもないです」
あの人がいるということはベルモットの変装だ
ポアロで知り合ったという設定らしく、私に手は出させないと約束させているらしい
安室透のお気に入りの女の子と言う設定だった
変装しても、ベルモットになら見破られてしまうからと今日は素顔だ
黒いオーラは恐怖でしかない
怯えるように安室さんの後をついて行くと毛利探偵に話しかけられた
「お前も来てたのか、安室くん
その方は?」
「僕の彼女です」
いっちょ前にーとか弟子のくせにーとか言っていたけど、毛利探偵の言葉はベルモットの事で頭がいっぱいな私には全然入ってこない
軽い挨拶を交わして、車内探索を再開した
アナウンスで事故があったことを知った