第60章 ex
1日ため息が多いと風見さんに注意された
落ち込んで帰っていると女性から声をかけられた
「あなたがさん?」
「え、えぇ…どちら様ですか?」
「ちょっと付き合って貰えます?」
彼女も名乗って、そう言われた
黙って後をついて行き喫茶店に入る
「コーヒーでいいですか?」
「はい…」
話は…と切り出そうと思ったら、彼女から先に言葉が出た
「陣平を返して」
「え?」
彼女の話はこうだ
陣平さんの元カノで、警察学校に入校した時に寂しすぎて別れを告げてしまった
先日の同窓会で再会して、まだ気持ちがあったことを自覚して、好きだと言った
陣平さんの答えは…
「好きな子がいるから付き合えない」
そう言われた
付き合ってるのかと聞いたら、絶賛片思い中と告げられて…
それでも忘れられなくて、休憩中に尋ねてきて再度思いを伝えたそう
でも、陣平さんの目線の先には私がいて、片思いの相手を見つけて、陣平さんが去った後に聞き回って私の名前を突き止めたらしい
「陣平じゃなきゃダメなの…」
泣きながらそう叫ぶ彼女は痛々しくて、見ていられなかった
「陣平を返して…」
「陣平さんはものじゃない…」
返すとか返さないとか…まるで物みたいに言う彼女に腹が立った
パシンと乾いた音がした
ビンタされたと気づいたのは、叩かれた頬がジンジンと痛みが出てきてからで…
動じない私にコップの水を顔面にかけられた
こんなドラマみたいな事ってあるんだなと妙に冷静な自分がいた
「思わせぶりな態度取って、陣平の事を縛らないで…
好きなの…陣平の事が…」
なんて声をかけたらいいんだろう…
わからなくて俯いて黙っていると
「何とか言いなさいよ」とまた手が振り上げられた
「そこまでだ」
息を切らした陣平さんが彼女の手を掴んだ