第60章 ex
青ざめている彼女
わけが分かっていない私
「お前とはとっくに終わってる
寂しかったと言って他の男のところに行ったのはお前だろ?
そいつとダメになったから、俺に戻りたいなんて言ってんだろ?
そんな都合のいい話があるか?」
泣いてる彼女を放ったらかしにして、陣平さんは私の顔をハンカチで拭いてくれる
「ごめんな、赤くなってる」
叩かれた頬を親指でなぞった
「大丈夫、陣平さん
彼女とゆっくり話して…このまま帰しちゃダメだよ」
椅子から立ち上がって、変わりに陣平さんを座らせた
腕をグッと引かれたけど、私は大丈夫、帰るねと掴まれた手を押し返した
会計をする時に店員さんがタオルを貸してくれると言ってくれたけど、ハンカチがあるから大丈夫とやんわり断って店を出た
ポツポツと雨が降ってきて、水をかけられたのを誤魔化すのには丁度いいと思って、濡れて帰った
カバンを玄関に放り投げて、濡れた服のままベットにダイブした
(思わせぶりな態度…)そのフレーズがグルグルと頭の中を駆け巡る
陣平さんにも、ヒロくんにもそんな態度取っちゃってるのか…ダメだな…私…本当に嫌な子…
チャイムが鳴るがまだ全身濡れたままだし、動きたくない
何かの勧誘か、陣平さんだと思う…
陣平さんとは顔合わせずらいな…
今度は携帯の着信音…
玄関に置いたままだ…
切れては鳴り切れては鳴りを繰り返して今度は鍵穴に鍵が入る音がする
あぁ、そっか…陣平さんに合鍵渡してたっけ
何かあった時ように、陣平さんちの鍵も私も持ってる
緊急時にしか使わないって約束だったのに
ベットに潜り込んで頭から布団を被った
ベットが濡れようが構わない
とにかく今、陣平さんとは会えなかった