第50章 grow apart
「お前の涙は相手の事を想っているからこそ、だと思ったが…違うのか?」
赤井さんはずるい…なんでも見透かしたように言うんだもん
「どうしよう、私…また傷つけちゃった…
あんなに思ってくれてるのに…また…」
堰を切ったように泣きながら喋る私に赤井さんは少し驚いていた
「胸を貸してやりたいが、諸伏に手を出すなと言われているからな…」
これで我慢してくれとハンカチを差し出してくれた
「なんですか、それ…
ヒロくんに言われたって、ちょっかい出すじゃないですか…」
「して欲しいか?
女の涙を止めるのはキスするのが1番だ」
色気を放って近づいてくる沖矢さんの綺麗な顔
なにそれ、もっと方法知ってるでしょ?と思った
「止まったみたいだな…」
鼻先が触れてしまう距離まで近づいてきてそう言われて、涙が止まっていることに気づく
沖矢さんの指先が目元に触れて優しい顔が更に優しく微笑んだ
「やっぱりちゃんと彼と話しますね」
「それがいい」
ポンポンと背中をさすってくれた
「赤井さんは恋人いないんですか?」
「いないな…」
またその悲しそうな顔…
それ以上は何も語らなかったから私も聞いてはいけない気がした
赤井さんは肉じゃがの鍋の火を弱火にした
ティーポットを用意して紅茶の茶葉を取り出す
「何か手伝うことはあります?」
「大丈夫だ、美味い紅茶をいれてやるから見ておけ」
慣れた手つきで茶葉が入った缶を開けてティースプーンで2杯、ティーポットに入れた
じっくり沸かしたお湯をティーポットに注ぐ
蒸らしている間にビスケットを取り出してお皿に並べた
まるでアフタヌーンティーみたい
赤井さんのいれてくれた紅茶はとても美味しかった
「随分本格的なんですね」
「昔からの癖でね
1つ豆知識を与えよう
紅茶を飲む時、先にミルクを入れると茶渋が着きにくいんだ」
「へぇー、そうなんだ
これからはミルク先に入れよ」
赤井さんの紅茶を楽しんでいると赤井さんは口を開いた
「には後悔して欲しくないな
伝える相手がいつまでもいるとは、限らない」
「赤井さん…」
さっきの悲しい顔と相まってなんだか重みがあると感じた
公安の任務と組織を壊滅させること
そっちが先だと思ってしまう
私の大事な人を守って全てが終わった時誰と一緒にいたいって思うんだろう…