第50章 grow apart
沖矢さんが工藤邸に居候することになったと聞いたので、報告することも溜まっていたので尋ねてみることにした
「おや、これは珍しい」
沖矢昴の顔や声にまだ違和感しかないけど…こんにちはと挨拶をした
どうぞと案内されてリビングに通してもらった
「これとこれに目を通しておいてください」
「わかりました」
沖矢さんはエプロンをして何か料理をしていたみたいだ
いい匂いがする
「料理するんですね、意外…」
「有希子さんが教えてくれたんでね
いい気分転換になる」
だが、味付けは難しいな、と肩を落としていた
「味見させて貰えますか?」
「貴方が作ってくれた肉じゃがの味が忘れられなくて…再現してみたいのですがなかなか…」
「私のですか?そんなに美味しかった?」
「美味かったですよ」
「嬉しいな、そんな風に言ってもらえて」
「ようやく笑ったな」
ピッと機械音がして赤井さんの声で言われた
「ずっと難しい顔をしていたぞ」
「ごめんなさい…」
「気にする必要はない」
赤井さんは何があったか聞いてこなかった
肉じゃがの味見をして、もう少しお醤油とバルサミコ酢を入れたらどうでしょうとアドバイスをした
「これは興味深い、バルサミコ酢ですか…」
いつの間にか沖矢さんの声に戻っていた
その切り替えについていけない
「コクと照りが出るんですよ」
「ほぉー」
その口癖は一緒なんだとちょっと笑ってしまった
「諸伏の所へは行ってないのか?」
「公安の方の仕事が忙しくてなかなか…そろそろ行ってあげないと、飢え死にしちゃうかも…」
「そうか…俺は諸伏と違って話を聞いて優しく慰めるって言うことは出来ん性分でな
何か悩んでる事があるんだろうが、力になれそうにない…」
沖矢さんの声なのに口調は赤井さんで混乱した
「大丈夫です、気にしてくれてありがとうございます
自分で解決しなきゃいけないことだし、元々私が宙ぶらりんなのが悪いんで…」
「泣く、資格もないんです…」
ダメだ…昨日の事を思い出しちゃった…
陣平さんにあんなこと言わせてしまった
怒らせたならちゃんと謝りたいし、急に冷たい態度を取られて悲しくなった
どうでもいいなんて、思ってないのに、誤解させてしまった
それが辛くて…