第46章 Rotten Apple
「このまま、2人で何もかも投げ捨てて逃げちゃおうか…」
「えぇ?」
ヒロくんの提案に目を見開いて驚いた
「ウソ…ちょっと言ってみただけ…」
ヒロくんもこんな生活嫌だろうな
「組織を倒して胸張って、高明さんに会いに行こうね」
「…」
クシュンとくしゃみが出てしまって鼻を啜ると後ろから抱きしめられてコートの中に入れてくれた
「こうした方が暖かいから」
「う、うん…」
「兄さん元気かな…」
「電話した時は元気だったよ
所轄に異動になったって言ってたけど」
「連絡取ってくれてたんだ…ありがとな」
「高明さん、ヒロくんのこと気にしてた
私にも連絡ないって嘘ついちゃった…」
少しの間があって、ちょっと涙声のヒロくん
「嘘つかせてゴメンな…」
「ううん、全部終わったらまた長野連れてってね」
「あぁ、約束だ」
クシュンとまたくしゃみが出ちゃった
「そろそろ戻ろうか、風邪引いちゃうから」
「まだ、もうちょっと…ダメ?」
戻ったらまた組織を追うことや公安の仕事が待ってる
もうちょっとだけ、ここにいたかった
「でも…んーまぁいっか!」
「ありがとう」
ヒロくんの方に向き直ってぎゅうっと抱きついた
「……っ……」
なんだかヒロくんの様子がおかしくて、顔を見ようと上を向いた
そしたら、ヒロくんの両手で頬を包まれて
目の前いっぱいにヒロくんの綺麗な顔
「ん…」
びっくりした…ヒロくんのキスに
突然のことに頭が追いつかない
荒々しく何度も角度を変えて、酸素も思考も奪われちゃうようなキス
ハァハァとヒロくんの短い呼吸音、その隙に私も呼吸をしようとハァと息を吐いた
「あっ、んぅ……」
こんな激しいキス知らない
頭の芯まで痺れちゃうような感覚
苦しくて涙が溢れてくる
離れた唇と唇の間に銀糸が伝う
「ハァハァ…ヒロく…」
「…ごめん…」
今度はすっごく優しく包み込んで抱きしめられる
ヒロくんはずっとごめんと謝り続けていた
そんなに謝られ続けるとなかったことにした方がいいのかなと思った
家まで送り届けられて、そこでもごめんと頬を撫でられた
なんで謝るのと聞けないままだった