第18章 口実になるだろう
「なーんか、山田いねーと静かだな」
「うるさいやつがいなくて授業も部活も捗るのだよ」
「いーよ、そんな思ってもいねぇこと言わなくて。」
居残り練習を終えたオレたちは部室で制服に着替える。
時計は夜8時を指していた。こんな時間まで居残り練習をしているのはオレたちと大坪さんたちくらいだった。
「それにしたって1週間も風邪で寝込むって、山田どんだけ虚弱体質なの?」
バカは風邪引かない説が全く成り立たないじゃねえか、と高尾は笑いながら部室の鍵をかける。
職員室にそれと体育館の鍵を返しに行くと、監督兼担任の中谷に声をかけられた。
「緑間、高尾ちょっといいか?」
「なんすか、監督」
「山田大丈夫そうか?」
オマエら仲良かっただろ、部活は兎も角学校も来てないし連絡も取れないしで、心配しているんだ。監督は英語の小テストを採点しながら話を続ける。
「オレらも何度か連絡してるんすけど、あいつ電話出ないんすよ」
高尾が頭を掻きながら答えると、監督はそうか、と呟きながら赤ペンを机に置きオレに視線を向ける。
「これ、持ってってくれ。」
手渡された封筒には休んでいた分の授業のプリントが何枚か入っていた。
「・・・・・。」
「何があったかは知らないが、これで口実になるだろう」
監督はそれだけ言い残し、再び採点を始めた。