第12章 初めての恋
『あれ・・・?』
目を覚ますと、真ちゃんのベットにいたはずの私は自分の部屋のベットに移動していた。
部屋を見渡すと壁に寄りかかって眠る真ちゃんがいて、ここまで運んでくれたことを察する。そして自分の首に手を添えると、まだ微熱はありそうだが、大分楽になっていた。
しかし、熱があったとは言えギュってしてとお願いした自分が今更になって恥ずかしくなる。
昨日といい今日といい、真ちゃんを近くで感じすぎだ。体が大きいことは百も承知だが、いざ抱きしめられるとゴツゴツした体も頭を撫でられたときの大きな手も男らしくて、すごくドキドキした。
・・・・・ドキドキ?
今まで真ちゃんにドキドキしたことなんてあっただろうか、いやなかった。
ふと中学生の頃を思い出す。
「山田さんって赤司くんと緑間くんどっちと付き合ってるの?」
『まさか!どっちとも付き合ってないよ』
中学生になってからそれは毎日のように聞かれる質問だった。
真ちゃんとは幼稚園から、赤司とは小学校から一緒の幼なじみだ。そして中学生になっても私たちの関係性は変わることなく続いていた。
しかし中学生とは非常に厄介な年頃な訳で、そんな私たちを色眼鏡で見てくる人も少なくはなかった。
「じゃーどっちが好きなの?」
次の質問は決まってこうだった。
なんて答えるのが正解なのか分からなかった私は、好きじゃないよ、ただの幼なじみ、と毎回当たり障りない返答をしていた。
そもそも私は恋というものがよく分からないのだ。
真ちゃんも赤司も大好きで大切だけれど、イコールそれが恋だと思ったこともない。きっと違う誰かと運命的な出会いをして恋に落ちる、ずっとそう思っていた。