第10章 ただの幼なじみ
青峰と桃井からの電話はオレをイラつかせるもの以外の何ものでもなかった。
「ミドリーン!落ち込んでるときにごめんねー!元気出してね」
「うるせーよっ」
ピッ
食い気味で電話を切るとまたもや電話が鳴った。
「なんなのだよ!!」
また青峰かと思い少し大きな声で問いかけると電話の相手は高尾だった。
「緊急事態っ!!」
高尾は少し焦ったように早口で話し出した。
「山田と会ったか?」
「いや、オレ1人だ。花子がどうした?」
花子のこととなると、自分でも情けなくなるくらいに周りのことが見えなくなる。
「顔色すげぇ悪そうにして、オマエ探しに行ったぞ」
高尾の話を最後まで聞いたかどうか分からないが電話を切って、すぐに走り出した。
雨に打たれ、少しの涙を流したことで絶望しきっていた己の頭を冷やすことができた。そして花子を放ったらかしにしてしまったことに、少しの罪悪感がフツフツと湧き上がってきた。
少し走ると予想とは裏腹に、オレを見つけて手を振りながらニコニコしている花子がいた。
『もー真ちゃん探したんだけどー。』
「あぁ、悪かったのだよ。」
少しムッとした花子は、髪も服もかなり濡れていた。幸い、下着は透けていなかったが、このままじゃ風邪をひくのも時間の問題だ。
「オマエびしょびしょじゃないか、ロッカーに戻るぞ」
花子の右腕を掴んで少し強引に引っ張る。
案の定花子の体は既に冷え切っていた。
『・・・・・真ちゃん、』
「どうしたのだよ?」
俯きながらボソッとオレを呼び止める花子に問いかける。
『1年の全中の決勝で負けたとき思い出した。』
それは花子が初めて負けた試合だった。