第9章 そういうことか
残り15秒2点差、最悪なことに誠凛ボールだ。
大坪さんが、4番にマークをつく。
誠凛の3Pを止めるのが最優先だ。
しかし4番はスクリーンを使い、3Pラインよりかなり離れたところへ。
まさか、あの距離から打つのか?
自分程ではないが、なかなかの距離だと思った。残り3秒、彼のシュートは決まった。
「勝った・・・のか?」
バカめ。
一瞬気を抜いた火神を哀れに思った。
「まだ勝ってねーよ!」
高尾からパスを受け取る。
待っていたのだ、このときを。
「なぜオレが遠くから決めることにこだわるのか教えてやろう。3点だからというだけなはずがないのだよ。バスケットにおいて僅差の接戦の中、残り数秒の逆転劇は珍しくない。が、場合によっては苦し紛れのシュートでそれが起きる場合もある。そんなマグレをオレは許さない。だから必ずブザービーターでとどめを刺す。それが人事を尽くすということだ。」
オレは信じていた。
オマエが跳ぶと。たとえ限界でも。
一旦火神をフェイクで交わしシュートを打つ。
・・・・・はずだった。
だが実際に次にシュートホームへ入ろうとしたとき、背中が凍りつくような感覚がオレを襲った。
あるべきところに、ボールは無く、いないはずのところに、ヤツはいたのだ。
「僕は信じていました。火神くんなら跳べると。」
「なっ黒子」
「そしてそれを信じた緑間くんがもう一度ボールを下げると。」
その後のことは正直よく覚えていない。
81-82で負けた。
初めての負けにただただ呆然とする他なかった。
悔しいとか、敗因は何なのかとか、花子との約束はとか、そんなことを考えられるような気分にはまだ到底なれなかった。
(「たまにはおは朝も外すって!」)
(「うるさい、黙れ。」)
(『・・・・・。』)