第46章 やらなくちゃいけないことがあるから
「花子は何も悪くないんだ。」
『・・・。』
「むしろ悪いのは全部“オレ”たち・・・いや、“オレ”だけだ。」
もっと他に花子を守る方法はきっとあった。
Tシャツが隠されていたことがわかったとき、バッシュに画鋲を入れられた日、そのバッシュがプールに投げ捨てられた日、松野先輩と話した日、宮古さんと付き合うことになる前、黄瀬が花子とデートしたいなんてふざけたことを言い出したとき・・・タイミングは沢山あった。
そこでの選択を“オレ”は間違えたのだ。
その結果花子が嫌な思いをすることになってしまった。
「花子の言った通り、“オレ”は花子のことが好きだったし、それは今も変わらない。」
中学生の頃それが言えなかったのは、振られるのが怖かったから。振られて花子の言うただの幼なじみが終わってしまうことが何よりも怖かったからだ。
花子が(自分では気付いてなさそうだったが、)緑間を好きなのは明々白々だったし、その逆もまた然りで。2人の関係に嫉妬もしたし、壊してしまいたいと思ったことももちろんあった。
でも結局そんなことは何一つとして出来なかった。
(一度キスしたことはあるけれど)
花子は詳しく知らないだろうが、花子が不登校になった矢先だ。キセキの世代(アイツら)とも上手くいかなくなった。そうしていくうちに“オレ”は心の拠り所として“僕”を作りだしてしまったのだ。次いつ“オレ”に戻ってこれるのか自分でも分からない。
「だから、忘れないで。“オレ”は花子を大切に思ってるよ。緑間に負けないくらいね。」
『・・・赤司っ』
本当はもう少しこのまま話していたかったが、何度も言うように自分をコントロールできない。いつ“僕”が現れるか分からない。
「早く帰れ。緑間を呼ぼう。」
そう言うと花子はやめて!と大きな声をあげた。
『真ちゃんとは、さっき、別れたから。』
「どうして?」
『それは・・、あっ、私まだやらなくちゃいけないことがあるからっ』
なんて言いながら、別れた理由は何も言わず(本当に別れたのかも謎だが)急いで花子は部屋を出て行った。
(「やっぱり緑間に電話するか」)