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緑間のバスケ【黒子のバスケ】

第46章 やらなくちゃいけないことがあるから






『・・・し?・・・かしっ!・・・赤司っ!』



何度か花子に名前を呼ばれたところで、漸く気付く。ソファーで座る花子の何が、死んだ母さんと重なったのか。


それは青白くなった顔に、決して笑っていない不気味な笑顔、花子は生きているはずなのに、時期に死んでしまうような儚さがあって、生前最期に見た母さんとまるで同じだったのだ。そしてその恐怖が“オレ”へと誘ったのだ。




「花子、大丈夫なのか?」


『えっ?』




今し方まで押し倒していた彼女を抱きとめ、急に心配する“オレ”に不思議そうな声を出した。そりゃあそうだ。


花子を無理矢理抱いて自分のモノにしようとしたのも、花子をかけて試合をしようとしていたのも、“オレ”の中にいる“僕”であり、花子にとってはどちらも“赤司”なのだから、無理もない。


よくよく状況を飲み込めていない花子にも分かるように、努めて優しく声をかける。



「花子、“オレ”だよ・・・。今まですまなかったな。」


『えっ、あ・・・か・・し?』



目を丸くして、ほんの少しだけ光を取り戻した花子は、本当に?と再び訊ねる。



「あぁ。“オレ”だ。」



そう優しく微笑めば、花子は良かったぁ、と涙を浮かべながら、全体重を“オレ”に預ける。幾分無防備ではあるが、腕の中で顔を埋める花子はやっぱり可愛くて、愛おしい。


つい後頭部に手を添えて優しく親指で撫でると、首筋に見える複数の赤い跡に心臓がドキリと跳ねる。


その心臓は“オレ”がそうさせたのか、はたまた“僕”がそうさせたのか。悔しいけれど区別はつかない。だって“僕”(ソイツ)はすぐ側にいて、“オレの”隙を粗探し、見つけた瞬間にはきっと出てきてしまう。


・・・なんて愚かで弱い人間だ。
自分に自嘲しながらも、“僕”(ソイツ)が出てくるその前に、言わなければならないことを矢継ぎ早に花子に伝える。



「花子、よく聞いて。」


『ん、』


「時期に“オレ”は“僕”に戻る。」


『え、そんなっ、』



困ったような眉尻を下げ、不安そうな顔で覗きこむ花子に心配しないで、と頬に手を添える。


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