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緑間のバスケ【黒子のバスケ】

第45章 別れよう






子供っぽいと思っていた山田も、真ちゃんとのキスひとつであんなにもオンナの顔になるということも、潤んだ瞳で甘い声が漏れる口元がどうしようもなくエロティックだということも、オレは知らなかった。


真ちゃんと山田が置いていったカバンを持ち、体育館を後にする。周りの人たちがガヤガヤと試合の感想を言い合っている中、未だに自分の頭の中は(いやらしい)山田だけで。


そんな自分がどうしようもなく滑稽なのは、火を見るよりもあきらかだ。


誤解をして欲しくないが、もちろん心配だってしている。想い人が野蛮なヤツにあんな酷いことをされて、怒りで気が狂いそうになった程だ。傷つけられた山田の心中は計り知れない。


それに加えて、水道で無心に洗い流すあの姿は痛々しくて見るに堪えなかった。



心配しない訳などない。
本音を言えばオレだって、あのまま山田を連れ去ってどこか気の休まる場所へ連れていき、震える身体を抱き寄せたかった。


許されるなら、山田が求めるなら、オレのこの身だって何度でも捧げたい。そう思えるほどにアイツのことが好きで、大切で。


それでも結局山田が必要としているのは真ちゃんで、毎度毎度このスパイラルをひとり延々と繰り返している。




「“新しい恋”ねぇ・・・・・。」



何日か前に山田に言われた一言が、無意識のうちに口から零れ落ちる。




「始められたら誰も苦労しねぇんだよ、バーカ。」


「誰がバカだって?」



いつの間にか下を向いて歩いていて、聞き覚えのある声に反応して顔をあげればスッキリしたような顔をした真ちゃんがそこにいた。




「っええ!ビックリしたな!いつからそこに?いや、山田はどうしたんだよ?もう平気なのか?」



堰を切ったように話しかけるオレに、心底鬱陶しそうな顔をした真ちゃんは、肩にかかっているカバンを2つ手に取る。



「色々、悪かったな。花子は家で寝ている。それより試合はどうなった?」


「海常が勝った。」


「そうか。」



綻んだその顔を見てあぁヤったんだな、と下世話な想像をして、またひとり終わらないスパイラルに片足突っ込んだ。


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