第42章 オレが、奪うぞ
『ダメだー、もうギブ。高尾、布団借りてもいい?』
「はぁー?ダメに決まってんだろ・・・っておい!返事聞く前に布団に入ってんじゃねぇーよ。」
山田は躊躇いもせず、オレの布団へと入り込む。
ウィンターカップ予選が終わり1週間が過ぎた。最終日、美人の松野先輩(すげぇ見た目は好み)が山田に謝ってから、コイツは少し明るくなったような気がする。
吹っ切れた・・・とまではいかないだろうが、少しずつ山田も変わろうとしているのだ。
それはさておき、オレたちは今、オレの部屋で期末テストの勉強をしている。見た目通りバカな山田は、中間でも赤点を出しこの期末テストの結果によっては留年も有りうるのだとか。
なんとかそれを阻止したい一心で、山田がオレたちに頼み込み、今に至る。
そのくせに“眠い”“分からない”“眠い”“疲れた”“眠い”と山田は口を開く度に不満ばかり吐き出しているのだ。
そしてあろうことか。
隣に超ド級の嫉妬深い彼氏がいるのにも関わらず、他のオトコの布団で眠り出そうとしているのだ。こりゃあもう、色んな意味で気が気じゃない。
チラリと山田の彼氏に視線をずらせば、言わずもがな怒りを顕にしていて。
大きなため息がひとつ、オレの口から零れ落ちた。
「まじで山田、寝ちゃいそうだけど起こした方がよくねぇか?」
「いい。ほっておけ。留年でも何でもすればいいのだよ。」
“留年”
そのワードに引っかかった山田は、閉じていた瞳をパッチリ開き、ガバっと布団を剥いでさっきまで座っていた真ちゃんの横に腰を下ろしシャーペンを握った。
ったく初めからちゃんとやれよ、と思ったのも束の間。分からない問題にすぐさま山田はぶち当たったようだ。
『分かんないよ〜、眠いよ〜。留年やだよ〜。』
「オマエそれでよく秀徳入れたな。」
その後も山田の不満だけが、オレの部屋に響き渡った。