第41章 オマエの隣にだって
『・・・っ!』
体育館中にブザー音が響き渡り、瞬きすら惜しくなるような試合は104-104で幕を閉じた。
『延長・・・?』
「いや今回に限り、延長はないんだ。」
『じゃあ、これって・・・、』
「あぁ、引き分けだ。」
隣で立ち上がる監督が小さく呟く。コートの中のみんなは息を上げていた。もちろん真ちゃんも高尾もかなり体力を消耗している様子だった。
正直黒子くんのドライブにはかなり驚かされたし、火神くんの成長ぶりも半端なものじゃなかった。相当に練習を重ねてきたということは、誰の目で見ても明白である。
でもそれに劣らないくらいに真ちゃんや高尾も夏から今まで必死になって練習をしてきた。そして私はその様をずっと隣で見てきたから知っている。二人だって負けないくらいに成長していることを。
その結果が引き分けだ。
悔しい気持ちもあるが、秀徳と誠凛は互角と言ったところなのだろう。俄には信じ難いが、これが昨年できたチームとなれば末恐ろしいことこの上ない。
「火神、」
先に声をかけたのは意外にも真ちゃんの方だった。またケンカでも始まってしまうのかと内心ヒヤヒヤしながら見つめる。
「これで満足したわけではないだろうな?」
「んなわけねーだろ。とりあえず勝負はお預けだ。」
「フッ、少しはマシになったじゃねぇか。」
「うるせぇ、そういうことはオレに勝ってから言いやがれっ!」
「試合は引き分けかもしれんが、オレはオマエなんかに負けていないのだよ。」
「あぁ?」
睨み合う二人の間に入ったのは、いつも通り高尾と黒子くんだった。真ちゃんと火神くんは渋々と言ったところだろう。二人の間は開かざるを得なかった。
「まぁまぁ落ち着けって。ウィンターカップに引分はねぇ、冬には白黒つけよーぜ!」
「望むところです。」
そうして試合は、拍手喝采の中終了した。
しかし私には気がかりなことが二つ残っていた。
一つは鉄平さんの足。
そしてもう一つは、時を同じくして試合が行われていたはずなのに試合に出ていなかった霧崎第一の主力メンバーたち。
嫌な感覚だけがモヤモヤと私の身体に残っていた。