第40章 オレに取られるぞ
『もう、2人ともどうかしてるよ。そんなにとぼけてて明日の誠凛戦大丈夫?今から不安だよ。』
高尾と別れ、真ちゃんの部屋で何のマンガを読もうかと本棚を眺める。
「あぁ、大丈夫なのだよ。人事は尽くした。あとは天命を待つのみだ。」
『ならいいけど。』
やっぱり今流行りの鬼退治でも読もうかなと手を伸ばした刹那、真ちゃんに大きな声で名前を呼ばれた。その声にびっくりして、マンガを取ろうとしていた手が空を切る。
『どうしたの?そんな大きな声だして、』
「オマエこそココにいて大丈夫なのか?」
『ん?何の話?』
話が読めず、首を傾げると、ベットに座っていた真ちゃんが徐に立ち上がり一歩ずつ近づいてくる。
『えっ、なになになに。』
あっという間に私と真ちゃんの距離はわずか数センチとなり、私の背中は本棚にトンとぶつかった。
顔をあげたら、お互いの鼻がぶつかりそうで、私は斜め下あたりを意図的に眺めた。
『ど、どうしたの?』
「明日を前に、オレは今とても気が立っている。」
『う、うん。』
「悪いが今日は帰ってくれ。」
『・・・・・。』
「じゃないと、オマエを乱暴に抱いてしまいそうなんだ。」
おずおずと顔を上げれば、いつもに増して険しい顔をした真ちゃんと目が合った。その言葉とは裏腹で、真ちゃんの手は頬から首筋にかけて優しくそして厭らしく這った。
それだけで身体がゾクリと反応してしまい、思わず立ちすくんでしまう。
ここは真ちゃんの言う通り帰った方がいいのだろう。
だが、そう分かっているはずなのに、この先に待ちわびるその行為が一体どんなものなのか、一人想像して欲してしまう自分もいる。私はいつからこんなふしだらなオンナになってしまったのだろうか。
「おい、どうするんだ?」
『っ、』
「オマエが選べ。」
ゴクリと生唾を飲む。
その音だけが部屋中に響いた。
・・・真ちゃんはズルい。
“選べ”なんて言いながら、股下に長い足を片方ねじ込み広げさせて、私の両手を頭の上で纏める。
相変わらずくっつきそうな程の距離に鼻があって、少し動いたら直ぐにキスだってできてしまう。
そんな状態にされて、今更帰るという選択肢など無いに等しいのだ。