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緑間のバスケ【黒子のバスケ】

第36章 オレのオンナだ






『ほんとに何もされてないよ。・・・ただキスされそうになっただけ。』


「キスって、オマエ」


『怖くなっちゃって動けなかったけど、高尾が来てくれたから。・・・だから本当に赤司には何もされてないよ。大丈夫。』



頬に添えられた真ちゃんの手を取り握り返す。
体育館で真ちゃんの手を拒絶してしまったのは、正直自分でも驚いた。あの時は赤司のことと中学のことを思い出していて少し怖がってしまったが、落ち着いた今となってはもちろん怖くなどない。



『体育館でのこと、ごめん。』



きっと真ちゃんを嫌な気持ちにさせてしまったに違いない。それなのに真ちゃんは俯く私に優しく気にするなと笑う。


過去を思い出す度に不安になり怯えてしまう、こんなことがこれから先もずっと続いてしまうのか。どうしたら忘れることができるのだろうか。


考えても分かることはなく、焦りと不安だけがグルグルと私の中をいっぱいにしていった。


・・・こんなのはもうイヤなのにっ、



「元気そうで安心したのだよ。オレも赤司にあいさつくらいしてくる。」



大きな手が私の頭を覆うように乗っかる。
わしゃわしゃと撫でると、真ちゃんは踵を返し扉の方へと向かう。


心の中のモヤモヤが一気に広がる。もうウンザリさえしている。誰かに、男の人に、赤司に怯える自分が本当に嫌いになりそうだ。


私は変わりたい。いや、変わらなきゃいけない。いつまでも過去なんかに囚われていられない。そんな気持ちで私は真ちゃんの背中に抱きついた。



『行かないで、』


「ど、どうしたのだよ?」



不意に抱きつかれてびっくりしたのか真ちゃんの声は心無しかうわずっていた。大きなその背中に顔を埋める。


胸下あたりに回した私の腕を真ちゃんが優しく捕まえると、そのままくるっと向き合う形になった。



「なにごとだ?」


『・・・・・。』


「やっぱり赤司に何かされたのか?」



俯きながら黙りこくる私に、心配そうな顔で真ちゃんが覗き込む。真ちゃんが屈んでいる今なら、届くかもしれない。



『真ちゃんっ、』


顔をあげ少し背伸びをする。
そしていつもより低い位置にある真ちゃんの唇に自分のソレを優しく重ね合わせた。


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