第33章 赤司が大きくなったんだよ
痛みに驚き、膝から崩れ落ちた。
すぐ様バッシュから左足だけ脱ぎ、バッシュの中を確認すると無数の画びょうが入っていた。しかもそれはもうご丁寧に、針の部分が全部こちらを向いていたのだ。
足の裏から出血は少しだけであったが、出血よりもなにも痛みのが酷かった。
チクチクとした痛みが足の裏全体に広がり、少し痺れているような感覚。体重をかけるとズキズキと痛み、とてもじゃないが今はまだ立てるような状況ではない。
・・・誰がこんなことを?
試合直前だと言うのに、精神的ダメージはかなりのものだった。
「・・・あの、大丈夫?」
トイレの前でへなりこむように座っている私に声をかけてきたのは照栄中のジャージを着た身長の高い男バスの選手。
痛みに悶えて答えられないでいると、彼は優しく手を引っ張り近くのソファーまで連れていってくれた。
「ソレ。酷いことするやつがいるもんだな。大丈夫か?」
バッシュに入っている数え切れない程の画びょうを見て、彼は怒っているような表情をした。
恥ずかしさと悔しさが入り交じり、何も答えられない私に彼はこれあげるよ、と黒あめを1粒手に強引に握らされた。
「帝光中の山田さんだろ?」
『・・・え、なんで、』
「なんでって月バス載ってたじゃん。見たよ。」
あぁ、と私は力なく返事を返す。
正直、心がポキっと折れてしまった。もうすぐコートでのアップが始まるのに、私はなんだかもうどうでもいいとさえ思っていた。
きっとTシャツを隠していた人が、画びょうを入れたのだろう。つまりその犯人は、赤司が好きで妬んでやった訳ではなく、試合に出れない腹いせにやったに違いない。
これから一緒に力を合わせて戦うメンバーの中にその犯人がいる。そう思うと誰を信じて戦えばいいのか、今の私には分からないのだ。
重たいため息を吐くと、その選手はカバンの中から大きめの絆創膏を1つ取り出した。
「足、触るよ。」
『えっと、』
「動かないで。」
知らない人に足を触られることに抵抗を感じ、思わず引っ込めようとするとそれを制止するように彼は私の足をガッチリと掴んだ。
靴下を脱がされ、ポケットティッシュで血を拭ったあと彼はその大きな絆創膏を貼ってくれた。