第31章 楽しくてしかたないの
「山田さーん、ちょっといい?」
『ん?なに?』
クラスの違う女の子3人が、私の席の前にやってきた。その中の1人、宮古さんとは面識がある。彼女はさつきと同じ男子バスケ部のマネージャーだ。
・・・宮古さんは赤司と同じ3組だったはず。
ってことは他の2人も3組なのだろうか、そんなことを考えていると早速あの質問が飛んでくる。
「山田さんって赤司くんと付き合ってるの?」
『付き合ってないよ。ただの幼なじみ。』
この頃にはもうこの質問と答えは定型文のように、お決まりになっていた。次に聞かれる質問も大方予想がつく。
「赤司くんのこと好きだったりする?」
『好きじゃないよ。』
「良かったね、宮古。」
満足する答えが聞けたのか、ありがとう、と言い残し彼女たちは自分の教室へと足早に戻って行った。
赤司はモテる。
真ちゃんよりもずっとずっとモテる。
学年のモテ男ランキングで、圧倒的1位なのはモデルの黄瀬くん。次いで2位が赤司なのだ。
赤司はとにかく誰にでも優しい。特に女の子には輪をかけて優しい。そういうところがモテに繋がるのだろう。
とはいえ、こんなにモテるものなのかとも疑問に思う。
「直接赤司に聞けばいいのにな。」
『あれ、起きてたんだ。』
突っ伏した身体を起こすことなく、顔だけこちらに向けて気怠そうに話す灰崎くん。
「まじで、どっちとも付き合ってねぇの?」
『付き合ってないよ。』
「ふーん、じゃぁさ、」
『どっちも好きじゃないよ。』
先手を打って答えようと思い灰崎くんが話し終わる前に被せて答える。すると灰崎くんは鼻で笑った。
「ちげーよ。」
『ん?』
その時笑った灰崎くんの顔は、とても優しそうに見えた。
(「オレと付き合わない?」)