第6章 確証
紫耀Side___
部屋の扉を開けた途端に、
鼻腔に飛び込んできたのは
物凄い濃さの匂いだった。
部屋の奥には、獣のような目をした
岸くんと、ソファにうつ伏せで
震えていた勝瀬さんがいた。
……現状は思っていたよりも
酷かったらしい。
勝瀬さんの匂いは勿論だけど、
驚きなのは岸くんの匂いだ。
———なんなんだよこれ。
なんで、抑制剤打ってる俺が、
当てられそうになってるんだよ。
アルファの匂いは、魅力の象徴。
いくらヒートが来たことなかったからと、
こんなに濃い匂いにはならないだろう。
凄まじい量のフェロモンと、
岸くんの表情。
俺はただ呆然と、その場にいるしか
出来なかった。
その場に立ち尽くしていた自分とは
対照的に、海人はすぐ二人に駆け寄る。
「岸くん、とりあえず隣の部屋行こう。
離れた方がいい」
腕を噛みちぎる勢いで噛んでいる
岸くんは、辛そうに肩で呼吸をしていた。