第5章 岸優太の憂鬱
主人公Side___
岸くんを撮影現場で休ませて
もらっている間に、
私と蒲田さんで別に撮影のある
他のメンバーを現場まで送る。
その車中は
意外と静かで、誰も
余計なことは話さなかった。
……でも、その沈黙を
破ったのは永瀬くんで。
「優太大丈夫かな。
頭痛は引いたって言ってたけど」
「心配だよね。あんまり
体調崩すタイプじゃないから」
神宮寺くんもそう言いつつ、
永瀬くんの「アホやからな」なんて
唯一余計な一言に
軽い拳骨を入れていた。
「岸くんて本当に変わらないよね。
アイドルの顔も、素の時も」
運転席から、
そうメンバーに話を振ってみる。
「隠せるような器用なタイプじゃ
なかったりしますからね」
「岸くんほんとに素直過ぎるから」
「はは、そうなんだ。
でも、そんな人がリーダーで
良かったのかもね」
「それはほんまにそうっすよ。
優太は自信ないって言うけど」
「確かに。なんだかんだで
一番向いてるよね」
メンバーの会話に、
私は自然と笑みがこぼれた。
……このグループ担当出来て
本当に良かったなぁ。
もうすぐマネージャーして
三ヶ月が経つ。
メンバーのみんなとも、
それぞれ話が出来るようになったし
仲良くもなれた。
このまま、みんながトップ
取れるまで
見守っていけたらいいな、
なんて思う。