第5章 岸優太の憂鬱
やらなきゃだ。
この頭痛はおそらく、
風邪やその類いのものじゃない。
頭痛薬が効かないのは、
きっとそのせいだ。
今日のスケジュールは
この撮影で終わり。
ここさえ乗り切れば、
家に帰ってすぐ休もう。
たくさん寝れば治まる。
そう言い聞かせてダンスパートの
収録が進むけど、
俺の振りが圧倒的に遅れているようで
何度も止められてしまった。
「優太大丈夫か? 顔真っ青やで」
「岸くん体調悪いんじゃないの?」
「大丈夫大丈夫。ごめん」
メンバーも次第に気付き始める。
これ以上、
気を遣わせてはいけない。
「優太、今は休んでいいよ。
メンバーのソロパート順番に
撮ってくって話だから。
最後にしてもらうからそれまで
休んでよう」
チーフマネージャーの蒲田さんは、
そう言って手招きをしている。
とぼとぼとした歩きで向かうと、
撮影ブースの隅にあった
ソファに寝かせてくれた。