第3章 それぞれの葛藤
そんなふうに笑っていると、
ジリジリと腹の奥が熱くなる。
「……っ、」
久しぶりの熱に、
俺は少し驚いてしまった。
「廉? まさかきた?」
「うん、ごめん。ちょっと
治めてくるわ」
カバンの中から小型の注射器を
取り出すと、早足で
男子トイレへと向かう。
誰にも会わないように、
チラチラと辺りを見回すのが
厄介だった。
「……っ──!」
首の動脈に注射器を刺して、
中の透明な液体を流し込む。
この時の不当な違和感が、
俺は大嫌いだ。
「……っ、はぁ。久々にきたな……」
アルファのヒート。
オメガの発情のような重さは
ないけれど、アルファの人間は
一生付き合っていかなくては
ならないものだ。