第3章 それぞれの葛藤
廉Side___
この日の撮影は、他よりも
スムーズに終わったんだと思う。
前みたいに1時間巻いた、なんて
事にはならなかったけど、
予定時間より早く終わったのが
嬉しくて、メンバーのみんなで
はしゃいでいた。
『え、そんなに早く終わったの?
まだ会社にいるので、至急向かいます!』
電話越しに、勝瀬さんが焦ってるのが
伝わってきた。
大分仕事にも慣れたみたいで
手帳にいつもメモして、
ペコペコ頭下げて挨拶してくれて、
他のメンバーも思ってるかもだけど
勝瀬さんといると、
なんだかその場の空気が和む気がする。
「マネさん今から迎え来るって。
準備しとかんとやん」
「あ、ほんと? 俺準備しながら
パン食っていい?」
「岸くん呑気過ぎひん?」
くすりと俺が笑いつつ言えば、
楽屋は揃って笑いに包まれた。