第2章 名前はキンプリ
「あー、ベータだよ」
少しの間をあけて、
私は言った。
本当はオメガだけど、なんて
この先も言うつもりはない。
移動中の車内で、蒲田さんに
言われたことがある。
『気を遣うのは分かってるんだよね。
岩橋くんの事があったから』
『彼も気にはしてるんだけど、
やっぱりそういうのって
抑えらんないじゃん?』
『言っても態度は変わらないけど、
大事な時期だから内緒にしといて』
ずしん、と心に乗っかったもの。
オメガだから、
それに、女だから。
薬も、これから手放す事は出来ない。
そんなことを考えての間だった。
「あ、神宮寺と一緒なんだ」
「そう。だから話してみたくて」
「あ、そうなんだ?」
「でも一番いやすいよな?」
「ベータにはベータの
苦労があるんですう~」
永瀬くんの言葉に、神宮寺くんは
口を尖らせて言った。