第7章 通じ合った想い
ローは唇を合わせては離し、離しては合わせることを繰り返す。どちらの唇かわからなくなってきたところで、舌でノエルの唇を舐めた。
「ッ……」
驚きで開かれた彼女の唇に、自分の舌を侵入させる。
「ふあっ、ン…………んンッ」
好きに口内を暴れ回り、上顎を擦る。歯列をなぞり、ノエルの舌を吸い上げる。
ノエルの瞳に涙が滲む。目を閉じていても溢れてくるそれは、重力に従い、シーツの上にポタリと流れた。
「ふぅっ、ア、っん」
息を吸おうと口を開けるも、その隙間すら惜しいと塞がれる。
逃げる彼女の舌を誘い出し絡め取る。鼻から抜けるような甘い声にローは気を良くし、貪るように彼女の唇を味わった。
飲み込みきれなかった唾液が、顎をつたっていく。
(何……これっ、頭の中かき回されてるみたい……!!)
縋るようにローと繋がれている手に力を込めると、応えるように握り返された。
「ふあっ…………ハァ…………んぅっ…………ハァ……」
やっと解放された唇。二人の間には透明な糸が伸びていた。
乱れた息を整えようと呼吸をするも、する度に下腹部が甘く疼く。
「ろぉ…………」
「あんまり煽んなよ、手加減できなくなるだろうが」
「ッ!!」
元々赤かったノエルの顔が、さらに赤くなった。
「いい、よ。その…………初めてだから、優しくさえしてくれれば……あとはもう、好きにして」
「ッ⁉︎ おい、その言葉、後悔すんじゃねェぞ」
「ふえ? あっ、んっ!!」
首筋に唇を寄せ、キスを落とすロー。ちゅっ、と啄ばむようにあちこちにキスをするが、決して跡を残そうとはしなかった。
「ふうっ、あ……ろぉ、ロー」
「ン……どうした」
「シルシ……つけてくれないの?」
鈍感な彼女が何故それを知っているのか。一瞬本気で考えたが、その答えは案外すぐにでた。
彼女は恋愛小説を好んで読む。ローの部屋の本棚にも、数冊その類の本が増えたのがその証拠。
鈍感なくせに、そういうのは知ってるんだな、とローは感心した。だが
「あんなのただの内出血痕だろうが」
「それでも、いいの。お願い、ロー。ローのだって、証が欲しい」
「ッ……」
今まで抱いた女にも、何度かそのお願いをされた事があった。が、ローはことごとくそれを断ってきた。