第6章 気持ちの整理
ダイレクトに聞こえてくる水音が、ノエルの欲を煽る。
(耳だけで、私こんなになっちゃうなら…………これ以上やられたらどうなっちゃうんだろう。怖い、けど…………ローが、欲しい)
「いいだろ? もう待ては、ナシだ」
「んあっ! み、耳元で喋らない、でぇ……!」
耳が弱い彼女の耳元で囁くと、イヤイヤをするように首を振る。が、ローに抑えられているため、僅かに逃げる事しか出来ない。
「いい、よ……。ローに、あげる。私の全部。だから…………もらって?」
両手を、ローに差し出すように広げる。
ローは耳を舐めるのを辞め、ノエルをぎゅっと抱きしめた。
「ったく、何処でそんな可愛い事覚えてくるんだか」
「? ローにされたいと思った事しただけだよ?」
「そういうところだぞ……」
ぎゅっ、と抱きしめる腕に力を込める。それでも、決して痛くないような力で。
ノエルもそれに気付き、ぎゅっと抱きしめ返そうとした。が。
「んっ……!」
背中に回っていた手がそろりと動いた。
そうだ、今はタオル一枚。背中はとても無防備なのだ。
「いいだろ?」
「いいけど……電気、消して……」
ローは言われた通りにベッドサイドのスイッチを押し、電気を消した。月と星明かりだけが室内を照らす。
ローはノエルを見つめ、今度は露わになっている鎖骨に手を這わせる。
恥ずかしさでノエルの瞳に涙がにじむ。
「ッ!」
その濡れたアメジストの瞳が、ローの中の欲に火を灯した。
「ノエル……好きだ」
「私もだよ、ロー」
見つめ合って想いを伝え合う。
「離さないでね」
「頼まれたって、話してやらねェよ」
鼻先がピタリとくっつくほどに顔を近づける。
「ノエル…………」
「ロー…………」
名前を呼び合って、瞳を見つめ合う。
ローのグレーの瞳には、ノエルが映っている。ノエルのアメジストの瞳には、ローが映っている。
今二人の目には、互いしか見えていない。
「ノエル……」
「ん……」
ローの名前を呼ぼうとしたノエルの唇を、ローは自分の唇で塞いだ。
すぐに離れてしまったが、引き寄せられるように二人の唇は再び重なった。
いつの間にか、二人の手は絡み合うように繋がれていた。