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死の外科医と四季姫

第5章 自覚と戸惑い


二日酔いになっている船員達(主にシャチ)をイッカクとベポと共にからかっているペンギンは、ある二人の動きが気になっていた。

この船の船長であるローと、そんな彼の思い人であり、妹のように大切に思っている人、ノエルの事だ。

中々くっついてくれず、船員達は日々もどかしい感情に襲われている。

二人ともお互いが好きだと思っているのに、それを自覚しておらず、どうやったら自覚させられるんだ、と悩むペンギン。

しかし、今日の様子を見る限り、ローは既に自覚済みらしい。

初めて彼女の髪を拭く権利を奪われた。しかし、やられている側のノエルも、ローだと安心するらしく、ウトウトと舟を漕ぐ始末。

自分がやれば嬉しそうにニコニコとしているが、やはりローとは違う反応を見せている。

ここからでは何を話しているのかは聞こえないが、二人がいい感じになってきているのは間違いないだろう。

不意に、ノエルが大声を出して逃げ出した。その顔は言わずもがな真っ赤だ。

少し心配になって追いかけてみるも、中々見当たらない。ちょうど、昨夜宴にほぼ参加せず舟を動かしてくれていた船員が、島に着いたと報告してきた。

船長にも伝えるように指示し、シャチの元に戻ろうとすると、部屋のドアが開き、ノエルが出てきた。

先日一緒に買った服を着ている。チューブトップ以外の服を見るのは新鮮だ。

「出かけるのか? 一緒に……」

「ごめん一人にして!!!」

最後まで言わせず、ノエルは駆け出した。フラれたペンギンはガーン、と涙目だ。帽子のつばで顔は見えないが。

どんよりとした顔をしてリビングに戻ると、イッカク達に心配された。シャチはもう元気になっている。驚くべき回復力だ。

「ノエルちゃんに……フラれた。一人にしてくれーって、出かけてった…………」

「ノエル最近船長とイイ感じだよなぁ。早くくっついて欲しいけど、長ェな。どうすっかねー」

「いよっし、着いて行くわよ!!」

こういう時のイッカクの行動力は凄まじい。シャチとペンギンを連れて、さっさと船から出てしまった。

ローはベポと戯れていた。心ではノエルの事をどうしようかと考えながら。

ノエルは、初めての街で行くあてもなく、ただ顔を両手で抑えながら走っていた。
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