第2章 ハートの海賊団との出会い
太陽の光をキラキラと反射する広大な海。
その上を進む海軍の船。その中のとある一室。
冷たい石造りの床と壁に鉄の檻。地下にあるのか窓もなく、薄暗い。
そこは囚人が入る部屋だ。部屋、とさえ呼べるのかわからないが。
中に誰かがいる。蝋燭の光すら届かないような隅っこに、人が座っている。その格好からすると、女だ。
彼女は何をするでもなく、ただ膝を折り曲げて座り、冷たい壁を見つめていた。
あちこち怪我をしており、脚や腕に包帯が巻かれている。頬にも湿布が貼られていた。
彼女の両手首には鎖がつけられ、首にも錠がはめられている。首のそれは海楼石で出来ている。
亜麻色の髪はふわふわとしていて、肩元まで伸びている。白い、陶器のような肌に、桃色の唇。壁を見つめるその瞳は、アメジストのようだった。
彼女は、四季島の四季姫。それも、先祖返りが激しく、初代四季姫と同じ特徴をしていた。
薄まっていた血の力も、他の四季姫よりは高いだろう。それでも、初代にはまったくもって勝てないが。
ふと、彼女は目を閉じた。伏せられたまつげが涙袋に影を作る。
その瞼の裏には様々な思い出が、焼き付いていた。
シキシキの実を食べた時のとてつもない不味さ。同時に、泳げなくなった事。
優しく自分の名前を呼ぶ母の声。
母とともに行った東の海で出会った、年下で金髪の少年。その少年が、彼女にとってはじめての友達だった。
母と遊び、学んだ毎日。その母が、病気で亡くなった日。涙が枯れるほどに泣き叫んだ。
そして、ほんの一月ほど前。四季島が、バスターコールによって滅ぼされた日の事。
燃え盛る炎、倒れる木々。泣き叫ぶ島民達。
不幸中の幸いか、政府は島民の誰にも手を出さなかった。
シキシキの実の力を手にした四季姫を手に入れたい政府は、島民を人質に取り、彼女を船に収容した。
島民を全員船に避難させたあと、バスターコールをかけたのだ。彼女に帰る場所を与えないように。逃げ出せなくするように。
四季島があるのはグランドライン前半の海。
海軍本部のあるマリンフォードへと、順調に進んでいった。
余談だが、シキシキの実とはその名の通り、四季を思い通りに操る能力を持つ。時として天候をも変えてしまうというその力は、政府にとって喉から手が出るほど欲しいものだった。