第1章 出会い
轟音の元が凡て無くなった訳ではない。
それなのに。
突如、目の前に舞い降りてきた人物。
その人に目を奪われた瞬間から世界から切り離されたような感覚に陥る。
否、彼はきっと静寂と安寧をもたらす天使ーーー
「あのっ……!」
「あ"?」
人間の言葉を理解出来る優れた天使は、濁点混じりの短い返事をしながらそれに相応する顔付きで此方を振り返った。
中也は言葉を発して、失敗した、と反省した。
男達と追い掛けゴッコをしていて、決着が着いた一瞬、そもそも何故追い掛けゴッコが始まったのか、失念していたからだ。
目の前でしゃがみ込む深緑を見て、思い出す。
「手前が宝条氏のとこのお嬢さんか?」
「はっ、はい!」
つばさは、コクコクと可愛い感じを遥かに超える、ブンブンと音がしそうな勢いで首を縦に振る。
そして、キラキラとした瞳を向けて中也に言い放った。
「流石、天使様!迷える仔羊……山羊……、いや私のことをもうご存知なんて!!」
「はァ?天使??」
目の前の少女が何を云っているのか理解できない中也は首を傾げる。が、
『あははははっ!!中也が天使っ!?天使って…!』
「五月蝿え、糞太宰!!」
突如として通信してきた太宰の声に何時も通りの反応を示す。
そんな姿もニコニコ、キラキラとした目で見つめるつばさ。
そして、神のお告げまで聴こえているなんて!と宣うつばさの台詞に
「彼奴が神様だって!?あの死にたがりがかよ!?そりゃ傑作だぜ」
と今度は中也が爆笑する。通信機の向こうで太宰がムッとした気配を感じ取り、中也の気が収まったところで太宰から執事の男だけ生かして皆殺しにするよう指示を受ける中也。
「つっても、この嬢さんどうすンだよ」
『それなんだよねぇ』
通信機の向こうではつばさちゃん、無事かい!?と騒いでいる宝条氏の音声も聴こえている。
中也が頭をポリポリとかいていると、なにかに気付き、動いた。
「貴様ァ!良くも!!」
「ひゃあ!?」
残党が中也に襲いかかろうとしたのだ。
中也は咄嗟につばさを抱き抱え、その場から離れた。