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【進撃の巨人】〜こぼれ話集〜 短編

第1章 あの頃


この章は17巻70話『いつか見た夢』中の話です。


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オルブド区での巨人化したロッド・レイスとの戦闘後、ヒストリアが無事即位し、2ヶ月が経った。

エレンが得た硬質化の力により、新たな巨人殺戮兵器が誕生。死者を出さずに、昼夜問わず巨人を討伐できるようになり、ウォールマリア奪還が現実性を帯びてきている。
夜間順路開拓も順調な進度で進み、およそ一ヶ月以内に奪還作戦の決行準備の目処がたつであろう。

そしてこれは、エレンが自身の父親から受け継いだ記憶の中にいた調査兵団の男__彼が現訓練兵団の教官、キース・シャーディスであると分かった、夕食の際の話である。



「オイ...明日...行くぞ。キース・シャーディス、教官のところに」

エレンは突如、声色を変えて言った。


「...イヤその、頭突きは冗談のつもりで言ったんだ」

エレンはレイス家の血を引くヒストリアに触れ、記憶の中の男の正体を思い出そうと苦悩していたが、上手くいっていなかった。そんなエレンにジャンは「教官の頭突きでも食らえばいいんだよ」と悪態をついていたのだ。

しかし、教官のもとへ行こうと言ったエレンの意図は、それ目的ではない。


エレンはキースの若かりし頃の姿を記憶していた。

壁外調査の帰り、一人の戦死した兵士の母親の前で、涙を流しながら「何の成果も得られませんでした」と贖罪する姿を。
幼いエレンにとって憧れの対象であった調査兵団の兵士が、老婆に頭を垂れる姿は印象に残っていたのだ。


「...キース教官だ。親父の記憶にあったあの男は、キース教官だったんだよ...」

「エレン...どうして、そう思うの?」

アルミンが不思議そうに尋ねる。

「ガキの頃、ミカサとあの男を見たことがある。確か調査兵団が壁外調査から帰った時のことだ。きっとあれが...」


久々に掘り返した記憶を、探り探りだがエレンは思い出していた。

「ミカサは覚えてる?」

「...分からない。随分前のことだから」

「まぁ保証はねぇが、残念なことに頼りなのはエレンの記憶だけだ。正しいかは別として、久々に教官のところに行ってみるか。

...?おいサシャどうした、顔色悪ぃぞ?」


ジャンの声で全員の視線がサシャに寄った。

見ればサシャは突然、蛇に睨まれたカエルのように酷く怯えた顔をしている。


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