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溺愛執事の恋愛事情

第6章 完璧執事の、弱点



「………」



どうなってんだよ、こいつの情報網は。
敵には回したくないやつであることは、確かだ。


「皇、には……」
「言いませんよ、ご自分で話して下さい。そこまで僕は親切じゃありませんから」

「………」


「お前の姫は?」
「知るはずないでしょう。無知なのが、華のいいところです」


捻じまがったこいつの歪んだ感情のせいで出来上がった純粋無垢のお姫様。
同情すべきはやっぱり彼女だ。









「………失礼します、和泉様」



バルコニーに長居している間に、いつの間にか気付けば使用人風の男性。
西園寺家ならば把握できているが、姫月家の使用人まで把握しているはずもなく。
当然ながら、初対面だ。


「西園寺様から、お電話が入っております。至急、お取り次ぎ願いたいと」
「え?」

ああそっか。
携帯、切ってたんだ。
至急、なあたり。
思い付く要件はひとつだけ。



そのままお嬢様へと視線を向ければ。
姫月家総裁と奥方様と楽しそうに談笑中だ。



「……頼めるか、薔」
「もちろん、ちゃんと見ていますよ」
「助かる」




お嬢様と一緒に談笑するは彼の愛するお姫様。
たぶん一番信用できる。
薔をひとりバルコニーへと残し、『彼』の後へと、続いた。
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