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溺愛執事の恋愛事情

第6章 完璧執事の、弱点




「いいんですか?そんな顔して。━━━バレバレですよ」



友人とパーティーを楽しむ彼女をバルコニーから視線だけで追っていれば。
懐かしい声が、近付いてきた。


「そんなんで今までよくまわりにバレませんね」
「………」


「お久しぶりです、和泉『先輩』」


そう言って彼、大学時代の後輩、は。
隣まで来るとその足を止めた。




「━━━━お久しぶりです、鷹司様」




少しの間をおいて、そう深々と頭を下げれば。



「もう、いいですよ『それ』」



にこやかにしていた表情を一変して怪訝に曇らせ。
わざとらしく盛大にため息をついた。


「あなたに敬語なんて使われると、なんだか気味悪くなってしまいます。ウチも和泉家も、大して代わり映えしないでしょう?」


「………」


ぬけぬけと何を言ってんだ、この男。
鷹司家と言えば、姫月家より劣るものの今現在、姫月家の右腕として活躍してる名家だ。
まぁだけど。
昔馴染みなわけだし。
そっちがそー言うならば。


「………ああ、久しぶり。薔」
「はい。お久しぶりです」







こいつの笑顔は好きじゃない。
いつも笑顔の裏にどす黒い感情が見え隠れする。
あの、体全部純粋で出来てそうなふんわりお姫様は、こいつの何がよくてこいつにあれほど従順なのか、疑問しかない。


「気になりますか?」
「?」
「『お嬢様』」
「………」
「そんなに心配ならいつものようにぴったり張り付いていればいいでしょう?」
「……所詮執事ごときが前に出ていい世界じゃねーし」
「堂々とエスコートしといて、良くいいますね」
「お前もだろ」


堂々とお揃い感出しやがって。
『手出すな』、無言の圧力半端ねーから。


「華とは婚約していますから」
「……ふーん」


教師と生徒が。
大問題しかねーじゃん。
逃げられないのが、気の毒だ。



「執事などいい加減引退しては?あなたならできるでしょう?」
「は?」
「迷ってないでさっさと承諾すればいいんですよ」


「━━━━お前、それ」


「こんな世界、情報なんて筒抜けですよ。ご存知でしょう?」








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