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溺愛執事の恋愛事情

第6章 完璧執事の、弱点



何。
なんか、変。
パパも、ハイセも。



「ハイセ」
「はい」

車の後部座席のドアを開けてくれるハイセへと、かけた低い声。

「考えるって何?」

車に乗り込む前に、真っ正面からハイセを見つめれば。
いつものように。
彼は天使のような笑顔で常套句をその口から吐き出すのだ。


「なんでもありません、お嬢様」
「ハイセ」
「お嬢様の家庭教師の相談をされていたのです。聞いていたでしょう?ちゃんとお断りしておきました」
「………」
「………まだ何か?」
「いいえ。ハイセは、学校までいかないの?」
「申し訳ございません。旦那様をお送りしないといけないので」
「………」


ハイセ。
いつからパパの執事になったのよ。
あなた、誰の執事なの?


爆発しそうな言葉たちを飲み込んで。

「わかったわ」

車へと乗り込むと。
ハイセはその扉をバタン、と、閉めた。






いつからだったか。
ハイセがあたしだけのものじゃなくなったのは。
小さな頃はいつもいつも、そばにいて。
そう。
うざいくらいにそばにいて。
いつからだったかな。
ハイセが、パパとママからも必要とされ始めたのは。
ハイセが、使用人の人たちから一目置かれるようになったのは。
ハイセがみんなから、必要とされ始めたのは。
それからハイセは、どんどん忙しくなって。
あたしに付きっきりでいられなくなった。


『和泉様』
『ハイセ』


すれ違う度に名前を呼ばれるように、なって。
それでもいつもハイセは。

『すぐに戻ります。お待ち頂けますか』

そういって、ホントに数分立たずに涼しい顔して戻ってきた。
いつも、そう。
いつだってハイセは、完璧なんだ。
やることも、やらないことも。

隠し事も。


いつだって完璧。
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