第6章 完璧執事の、弱点
「朝からなんです?嫌な夢でも?」
「気にしないでちょーだい」
「?」
食後のローズティーをカップに注ぎながら首を傾げるハイセから、顔を反らす。
だめだわ。
気づいた途端に羞恥心が。
いつもいつも、当たり前のようにあたし、あんなことまでハイセにしてもらっていたなんて。
駄目。
恥ずかしすぎる。
「お嬢様、お車の準備が出来たようです」
「ええ、ありがとう」
ガタン、と立ち上がって。
頭を下げたままのハイセの横を通りすぎれば。
入れ違いに反対のドアが、開かれた。
「ハイセ、昨日はすまなかったね、まだ時間もあるから、ゆっくりと考えてくれればいいから」
「パパ?」
「━━━━皇!?」
ゆっくり考えて、って。
何?
そっとハイセへと目を向ければ。
パパがいるにも関わらずまだ頭はあたしへと下げられたままだ。
「ハイセ?」
「━━━━おはようございます旦那様。やはりお嬢様に家庭教師は不要かと思います。自分が責任持って教えられますゆえ」
「あ、ああそうか。そうだな。わかった。そうするよ。皇、学校しっかりな」
一瞬だけ、ほんの一瞬だけ間を開けたあと、ハイセはすぐにパパへと向き直りにっこりとそう、頭を下げた。
パパも決まり悪そうに、短くそう、返事をするとすぐに自分の席へと腰かける。
途端に、使用人の人たちが数名、パパを取り囲んだ。
「………」
「ハイセ?」
「お嬢様、遅刻してしまいます。お車へ」
「……ええ」