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溺愛執事の恋愛事情

第1章 神様ヘルプ!


和泉 琲生(はいせ)。
28歳。
専属の、所謂完璧執事。


だけどほんとは、和泉家長男、世間でゆー御曹司ってやつ。
なんで御曹司があたしの専属執事なんかやってんのか、実はちゃんとした理由があったりもするんだけど。

何をやらせても完璧だし。


外見なんて、それはもうため息が出るくらいに美しいのよ。
頭だってバカみたいにいいし。
パパの会社内緒で手伝ってるの、あたしが知らないとでも思ってんのかしら。




品行方正。
容姿端麗。
頭脳明晰。


並べたらほんと、きりないくらいのスペック。




そんなハイスペクタルな彼と恋人同士になれたからといって、そう簡単に激辛だったあたしたちの関係が甘々な関係に変化するはずなんて、なくて。
考えたすえの、行動。
『誘惑』、なんて、真正面からする勇気もできる行動力もない、し。
だから。
わざとだよ。
こんな真夜中に起こしたのも。
メイド服も全部、わざと。
まわりくどいやり方なのは重々承知してる。
今のあたしにできる精一杯の、誘惑なの。








「…………はいせ」

「はい、お嬢様」

「あたし寝てた?」
「少しだけ」


いつの間にかキッチンは、ハイセの自室へと変わっていて。
カーテンからはうっすらと明かりが漏れている。

「なんじ………?」


両肘ついて、頭を起こそうとまだまだ眠い目を擦れば。
眼鏡をかけたまま、ハイセはベッドを軋ませながらすぐ隣に腰掛けた。

「ハイセ?」

「まだまだ、起きるには早いですよ、眠り姫」

髪を解かすように頭を撫でられると、すごく心地が良くて。
磁石のように瞼がくっつきたがる。




「学校で、何かありました?」
「ぇ?」
「眠れないのでしょう?」


頭を撫でる優しい掌はそのままに、さらに優しく、深い黒曜石が真上から見下ろして、きて。
不覚にも心臓が小さく跳ねた。
なんか一気に眠気覚めたかも。
駄々漏れな色気も外見も、無駄ではなかったのね。
一瞬にして人を覚醒させちゃうなんて。
やっぱりさすがだわ、ハイセ。
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