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溺愛執事の恋愛事情

第5章 溺愛執事の逆襲


『おいで』



こんなに甘く溶けるような声も笑顔も、まさか自分が出すなんて思えなかった。
適当に遊んで抱いて。
飽きたらすぐに違う女探して。
探すまでもなく、幸運にも向こうから勝手に寄ってきた。


生まれた頃から裕福に育って、手に入らないものなんてなくて。


自由気ままに、好き勝手やってきたんだ。





だけどあの日。





差し出された小さな掌を本気で守りたいと思った。
震える小さな掌を、握り返したあの日。
あの日から、たぶん俺の人生は変わったのだと思う。





今、腕の中にいる一回りも小さな女の子。
だけど立派に『女』の顔をするようにもなった、俺の大事な大事なお姫様。



守りたい、とも思う反面。
大切にしたい、と思う反面。


苛めてやりたくも、なるもので。



腕の中で安心しきっている彼女を、困らせたくもなってしまうのだ。






「皇」



だから。
そろそろ下剋上くらい、起こしてもいいだろう?





「………」


キョトン、と顔を上げ俺を見つめるお姫様へと、最大限の笑顔を向けて。


「これ、俺のシャツですね?」


逆襲の、始まりだ。






「ぇ」



「何、してたんです?」



顔を真っ赤に染めて顔を背ける彼女の手首を取って。
さらに追い討ち。
逃がさない。



「………これ、は」

「これは?」


「着る服が、なかったから」
「着替えならそこにあるでしょう?」


手首を取ったまま、視線だけで床に散らばった夜着を見る。
合わせて視線を向ける彼女は、真っ赤になりながら口をパクパクとして。


その口から、なんともかわいらしい大義名分とやらを吐き出すのだ。



「もう、小さくなったのよ」


「は?」


「小さくて、着れないのよ」




ぷい、と。
顔を真っ赤に染め上げながらさらに背ける彼女に。
そんなかわいらしい言い訳を引き連れて来る彼女に。


ヤバい。



笑いが止まらない。



「それは、失礼致しました。新しいお召しものをご用意いたします」
「………っ、そうしてちょうだい」

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