第5章 溺愛執事の逆襲
良く見れば青アザまである。
これって。
金属だよね?
引きちぎれるものなの?
「ごめん、ごめんなさい」
ハイセの両手首を引き寄せて。
額をつけた。
「だから、大丈夫だと言ったでしょう?」
そのまま、頭のてっぺんに送られた口づけ。
「謝るのは僕の方です」
「ぇ」
「強引に、酷くしてしまった」
「違う!そんな風に思ってない。ハイセの余裕ないとこ見れてあたし嬉しかったもの。ハイセに触れられて、嬉しかったもん」
「………お嬢様」
「皇」
「?」
「名前が、いい」
名前で、呼んで欲しいから。
「………皇」
優しく、心地よく浸透する声。
ずっとずっと、この声が聞きたかったの。
甘い時間に、あたしだけが知るハイセ。
ハイセの声。
何もかもが好きすぎて。
勝手に目頭が熱くなる。
ただ、名前呼ばれただけなのに。
たった一言、呼ばれただけなのに。
次の言葉を期待して、顔を上げれば。
「おいで」
にこりと微笑む。
ハイセの笑顔。
そのままその腕の中へと飛び込んだ。