第5章 溺愛執事の逆襲
「………今日はお玉、持ってないですね」
「必要ないもの」
ドクン ドクン ドクン
心臓、うるさい。
だってまさか、帰って来るなんて思わなかったんだもの。
ハイセの部屋なんだから、帰って来るんだけど。
それはそれで、当たり前っちゃ当たり前で。
だけどパパと行った、って、言ってたし。
帰ってきたら絶対、外が騒がしくなるからわかると思ったんだもん。
急に、静かに帰って来るなんてずるい。
だから。
『誘惑』。
咄嗟に、ほんとに咄嗟に体が動いてた。
たまたま見つけた、『それ』。
つい先日つけられた耳障りな金属音のする、それを。
まさかハイセにつけるなんて、全部咄嗟のことで。
この後どーすればいいのか、全然わかんない。
「退いて頂けますか」
「……嫌よ」
なんで、余裕なの。
手の動きは奪った。
馬乗りに跨がったこの状況で、ハイセに利があるとは絶対思えないんだけど。
………むかつく。
「お嬢様?」
「黙ってて」
静かに。
お酒とタバコの匂いの染み付いたシャツからボタンを外して。
はだけた肌へと、小さく一度、ハイセにバレないよう深呼吸してから。
いつもハイセがするように吸い付いた。
「………っ、皇っ」
間違えた。
吸い付く、つもりが噛みついた、のが正しいかも。
だけど。
肌へと触れた瞬間にビクン、て。
今ハイセ反応した。
間違って、ない?
「………なに、して……っ」
改めて再度、今度は舌を使って舐めたり、吸い付いたり、を繰り返せば。
ガチャガチャとハイセの両手首が、鳴った。
「…………」
ハイセがするように胸の先端にも舌を這わせば。
明らかにハイセの息遣いが乱れてくる。
そのまま。
体ごと場所を移動して、ハイセのズボンへと手をかけた。