第3章 お嬢様、バイトする
『同等に、見てほしかった』
「………」
言葉が、出てこない。
くたりとしたまま体重をかける彼女を、そのまま抱き止めながら。
硬直した自分自身を、隠した。
「ハイセは、いつも大人で。あたしはいつまで立っても子供で。ハイセにとってあたしはいつまでも小生意気なお嬢様でしかないのかな、とか思ったら……、ハイセに褒めて貰える方法は、自立しかないのかなって。」
ずいぶんと、短絡的な思考回路。
「別に、ハイセとケンカしたかったわけじゃない」
「お嬢様」
ピクリと反応して、体を起こそうとする彼女をさらに強く抱きしめて腕の中へと囲う。
「別に、大人なわけじゃありません」
「ぇ」
「執事としての仮面がなければ、いつだって僕はあなたに振り回されてばかりの、子供です」
「ハイセ?」
「駄目だとわかっていても、あなたを毎回毎回くたくたになるまで抱き潰してしまうし」
「__ッッ、ハイセっ!?」
「あなたの前では自制など出来ない、ただの子供です」
いつも、いつだって。
自尊心と葛藤してるのに。
理性を保つのを、苦労してるのに。
「いつも、カッコ悪いところばかり見せてしまっています」
「ハイセは、カッコいい、よ?」
「あなたの前ではカッコ付けてるだけです」
「…!!なら、あたしもハイセの前ではカッコつけたいっ」
「今さらでしょう」
6歳でおねしょした現行犯が、何を言ってるのでしょう。
隠蔽したの、誰だと思ってるんですか。
「………ぅ」
「プレゼントなどなくても、お嬢様が俺のものになった事実だけで、いい」
「でも、ハイセあたしにいろいろくれたじゃないっ!あたしも……っ」
「しー」
言葉を続ける彼女の唇ごと、奪い尽くす。
いらない。
なんにも、いらない。
これだけ。
このぬくもりだけあれば。
「ハイセっ」
「プレゼントよりも、俺は皇がいい」
「はぁ?」
「今すぐもらっていい?」
「……っ、いつも、勝手にしてるじゃないっ」
「それは、肯定の意味で、いい?」
「………っ」