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溺愛執事の恋愛事情

第3章 お嬢様、バイトする


GPS。
携帯の画面を開けば、同じ場所から動かない、一点の赤い丸。
いやほんと、携帯にGPS付けた第一人者に感謝しかないわ。
ついでに。
バックに取り付けてある盗聴器の電源をオンにして。
小さなイヤホンを右耳へと取り付けた。



「…………」




聞こえてきたのは。
想像するだけで吐き気を催すくらいの、雑音。
殺気だつ我が身を抑えるのに正直必死だった。











『はいせぇぇっっ』





「……呼ぶのおっせぇよ、バカ」




こんだけ追い詰められて。
追い込まれて。
こんな状況にもかかわらず一度も携帯はならなかった。
名前すら、呼ばれなかった。
名前呼ぶまで助けてなんかやるもんか、なんて子供染みた思考を巡らせながらもうスピードで走らせた車。
たどり着いた真っ赤な悪趣味なドアをピッキングする事ほんの数秒。
タイミングを測ったように機械越しに聞こえてきた、愛する人の悲鳴に似た、悲痛な声。




だけど。



目の当たりにした、身の毛もよだつ目の前の光景に。
頭の中で何かがキレた。






……2、3、………全部で5人。
なら、たぶんなんとかなる。





真っ赤に腫れた瞳に驚愕の色を湛えた彼女へと向き直り。


「お呼びでしょうか、お嬢様」

普段と変わらずにこりとその瞳を細めた。










………のが。


最近の記憶ではたぶん、最新だ。



「駄目!!ハイセっっ!!」



背中に感じた荷重と、大好きなその透き通る声。
我に返ったのは。
その時だった。


「………お嬢様?」
「わかった!ハイセが強いのは、凄くよくわかったから!!」

「………」


気付けば4人、床へと横たわり。
目の前には最後の1人。
怯えた顔のヤツの胸ぐらを掴んでいた。


「お願い、もう帰りたい……っ」




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