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溺愛執事の恋愛事情

第3章 お嬢様、バイトする








どーしよう。
あたしだってバカじゃない。
いや違うか。
バカだから、こんなところノコノコついて来ちゃうんだ。



「どーしたの?こっちおいで」

「いや、ぁのこれ……」



裏道で紳士的な男性に声をかけられて。
モデルの仕事に興味あるか、聞かれて。
肩を抱かれるままについてきたのは全然想像とはかけ離れた古びた雑居ビル。
さすがにまずいと体に危険信号が届いた時にはもう時すでに遅くて。


「………」



なんのモデル、か、なんて。
嫌でもわかっちゃうこの雰囲気。



「あ、たしやっぱり……」



「今さらそれは無理でしょ。お金、渡したもんね?」
「あの、返します、ので」
「契約違反はその10倍、払ってもらうけど」

「ぇ」


じゅ、ばい?


だ、ってこれ、20万……。


「払えんの、お嬢ちゃん」

「ぁ、の……」



ヤバい。
これ絶対、ヤバい。


「ぇ、っと、家に、電話すれば……」


ハイセなら……。
ハイセなら絶対、なんとかしてくれる。


「………」


けど。


「?」


出した携帯を、バックに仕舞うと、不思議そうに数人の男性があたしを見た。


「や、っぱり、あの……」


ハイセに頼るのは、やっぱり嫌だ。


「………ごめんなさいっっ」




自力でなんとかするんだ。
今なら、走って逃げればたぶん、逃げれる。



くるりと振り向いて、勢い良くドアへと走るけど。



「………っ、嘘っ」



なんで、開かないの??
ガチャガチャやっても開いてくれない真っ赤なドア。
どんどん叩いたところで、誰にも届くはずなどないのに。


「ハイセっ!!」


口から出たのは、今一番会いたくない、愛しい人の名前だった。


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