第12章 溺愛執事の恋愛事情
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「はいせ━━━━━━っ!!」
「………大声で呼ぶの、禁止」
「えぇ?なんで?」
「ここじゃ、目立ちすぎる」
車の前で待つハイセへと息を切らせて走りよれば。
コツン、て。
額が小突かれた。
「だから迎えなんて良いって行ったのに。終わったら会社行くってば」
「この前そーいって迷子になったの誰だった?変な奴らに絡まれてたの、誰だった?」
「……あ、れぇ?そうだっけ」
「いい加減、こっちにいるなら公共機関くらい使えるようになって欲しいもんだな」
「だから、善処してるってば!!」
こっちに来てから数ヶ月。
あたしはこっちの大学に通い始めた。
英語もなんとかなんとか、ほんとになんとか、日常生活に支障ないくらいには出来てる。
ただどうしても。
バスなり電車なり、苦手。
ハイセがいかにあたしを甘やかしてくれたかが、よくわかる。
日本では『お嬢様』でも、こっちではそんなこと関係ない。
家事全般だって、当たり前のようにやってもらっていたことがこっちでは非日常。
「ハイセの美しさは世界共通だったのね」
「………それ、褒めてる?」
「けなしてるように聞こえるかしら?」
「珍しいな、と思って」
「?なんで?」
「皇が素直にそんなことゆーの」
車の後部座席のドアを開けてくれたハイセに促されて中へと入り。
反対側からハイセも車へと乗り込めば。
何も言わずとも車は走り出した。
「は、ハイセのがきっと、うつったのよっ!!」
「俺?」
思い出したように身体を熱くするあたしに、にやにやしながらハイセが、肩へと手を回す。
「俺が、何?」
「…………っ」