第12章 溺愛執事の恋愛事情
「…………」
「……………」
バスローブを纏い、肩に掛けたタオルで濡れた髪の毛を拭きながら部屋へと入れば。
携帯片手にパソコンを両手で打ち込み、険しい顔しながら英語で会話するハイセの姿。
その顔には眼鏡。
バスローブ姿には到底似合わないその雰囲気に、思わずそのまま目を離せなかった。
早すぎて会話が聞き取れない。
『対処』『早急』
なんとか聞き取れた英語の内容からしてたぶん、向こうの会社からだとは思う。
時々聞こえる『西園寺』の単語。
パパのこと?
なんか、トラブル?
電話に集中していたハイセがあたしに気づくと、片手で合図をひとつ。
電話の相手へも英語でなにやら話すと、そのまま電話を切りパソコンもパタンと閉じた。
「トラブル?」
「ああいや、大丈夫。彼らだけでなんとかするよ」
「………忙しいんじゃないの?」
眼鏡をテーブルへと起き、あたしの後ろへと回ると。
ハイセはタオルであたしの髪の毛を拭いてくれた。
「おいで」、と。
促されるままにベッドへと腰を下ろし、ハイセの足の間へと囲われる形で、ハイセは髪の毛を拭くのを続ける。
「仕事、いいの?」
「いいよ。今日と明日はオフだ」
「でも、電話」
「気にしないで。皇が気にする必要ないくらい、些細な電話だから」
「でも………」
あんなに険しい、顔。
初めて見た。
「皇」
タオルごと顎を掬われて、振り抜き様に唇が重なる。
「こっちに集中」
「ハイセ………っ」
再度唇が重なり、雪崩れ込むようにベッドへと崩れ落ちた。
「そんなに気にするなら、ご褒美ちょーだい」
「ぇ」
見上げたハイセの瞳に、宿った雄の光。
「一番のご褒美」
「………ご、褒美?」
「そう。皇にしか出来ない。」
「…………うん」
ハイセの首へと両手を回し。
引き寄せながら唇を重ねた。