第12章 溺愛執事の恋愛事情
ぎゅ、て抱き締めて。
皇の肩へと顔を埋めた。
余裕なんかない。
みっともないくらい、惚れて惚れて。
誰にも触れさせないよう、誰の目にも止まらぬよう閉じ込めておきたいくらいに。
いつだって、取り繕った虚勢張るので精一杯で。
こんなにも。
溺れてる。
「………ハイセ」
頭の上に、柔らかい掌が触れた。
のと。
ふわ、って、笑う気配が同時に、して。
「……どーしよう、ハイセがかわいすぎる」
顔を埋めていた肩が、震えだした。
「誰が余裕ないって?」
「あ………」
バシャン、て。
両肩を引き強引に向きを変えれば。
湯船のお湯が荒々しく波だっていく。
そのまま両肩に掌をおいて、青ざめる彼女の顔を正面から見下ろした。
「残念、後悔しても手遅れ」
「…………っ、きゃあ!?」
彼女の体を持ち上げて、浴槽の縁に腰をおろしてやれば。
湯船よりもヒヤリと冷たい床にビクン、て体が跳ねる。
さすがスイート。
浴室まで豪華で助かる。
縁に座らせてもまだまだ余裕がある。
これならたくさん苛めても、彼女に逃げ道を与えることが出来るから。
まぁもっとも、逃がすつもりなんてないけど。
逃げられない、って悟った時の彼女の怯えた顔は、昔から大好物だ。
「かわいい?」
「あ……、いや、全然……っ!?」
囲うように浴槽の床へと両手を伸ばすと、ジリジリと後退していく小さな体。
「ほんとに昔から、あんたは俺を煽るのが上手いな」
「あ、あお……っ!?ってかハイセ、あの、見え、て……っ」
「ああ、別に。今さら。何度も何度もあんたのなかに挿入ってるし」
「…………っ」
「でも見えるのが嫌なら、しゃがむけど」
「お、お願いします……」
「………りょー、かい」
見た目も体も。
こんなにも大人の女性へと成長してるのに。
心はこんなにも昔と変わらず初心なまま。
「━━━━ハイセっ!?」
ヤバいな。
苛めたくて、鳴かせたくて。
困らせたくて仕方ない。
両足を大きく開き、顔を近付けた。