第12章 溺愛執事の恋愛事情
「な、なんなのよ……っ、もうッッ」
さらに端へと逃げようとする皇を腕の中へと閉じ込めて。
背中は浴槽の端へと凭れかける。
「捕まえた」
「は、ハイセ……っ」
手足をバタバタさせて逃げようとする彼女に、どうしても笑みが溢れてしまう。
片腕をお腹に回してるだけなんだけど。
すごく必死でもがく皇に。
駄目だ。
我慢の限界。
堪えきれずに吹き出してしまった。
「〰️ハイセの、バカぁっ。笑うことないじゃないっ!!恥ずかしいの、我慢して……ッッ、ぅぅっも、やだぁ」
「はぁ?なんで?泣くほどやだった?お風呂?」
「やだぁ!!ハイセなんて嫌いっ、大嫌いだも……ッッ」
うわああんっ
子供みたいに泣きじゃくる皇に、なんとなく幼い頃を思い出して。
変な安心感。
懐かしい。
やっぱりここは、居心地がいい。
「皇」
顎を引き寄せるように振り向かせ。
泣きじゃくってる皇の唇を奪った。
「…………っ」
「止まった?」
「〰️〰️っ、いつもいつも、なんでそんな余裕なの!!ハイセのバカっ!!」
「皇?」
「いつまでたってもあたしばっかり子供でッッ、ハイセに、対等に見てもらえない!こんなときまで、ハイセは全然普通で、あたしばっかり………ッッ」
余裕?
普通?
誰が?
「………ハイ、セ?」
ぎゅう、て。
後ろからきつく抱き締めた。
「なんか……ぁの、ハイセ……」
「うん。全然余裕なんかねんだわ、俺も」
さっきからはちきれそうに痛むそれを、わざと押し付けるように擦りつければ。
皇はビクン、て、腰を引く。
「あんたがいるだけで、声を聞くだけで。想像するだけですぐこんなんなる。全然余裕なんかねーよ。ずっとずっと想い続けてた女が、やっと自分のもんになったのに、『いらない』とか言われるし」
「あ、あれは……っ」
「うん。だから今、ちゃんと実感したい。ちゃんと皇がここにいるって。腕の中にちゃんといるって。だから逃げないで、皇」