第12章 溺愛執事の恋愛事情
「………」
モゾモゾと布団が動いて。
ゆっくりと皇が、顔を出した。
真っ赤に頬を紅潮させて。
目なんかまだまだ潤んでいて。
………かわいい。
一瞬だけ、見惚れるくらいには。
「………キレイに、なった?」
「ん?」
「さっき、ハイセ……」
布団から顔半分だけ出して。
そう、覗き込む皇があまりにもかわいすぎて。
ヤバい。
またこれ、襲いそう。
「………髪、切ったんだ」
「ぇ」
「似合ってる」
皇の真上にマウントとって、髪を一束掬い、口付けた。
みるみるうちに真っ赤に染まっていく皇と、視線を合わせれば。
「〰️〰️っ、無理っ、ハイセ、あたしもうほんと……ッッ」
「しないって」
「ぇ」
「汗かいて気持ち悪いだろ、風呂入るか」
頭冷やさないとな。
このままいたらマジで襲いたくなる。
皇の匂いに。
表情に。
抗えなくなる。
「きやぁ!?なんでっ?」
「だって歩ける?」
「歩ける!立てる!……から、大丈夫!」
「いやいや動けてないから。今更だし」
誤魔化すように、シーツごと皇を抱き上げ。
真っ赤な顔して抵抗する皇に笑いながら、浴室へと足を伸ばした。
「〰️〰️」
「…………」
ぷくーと、不機嫌全開感満載で、皇の後ろ姿が肩まで浴槽に沈んでる。
「……遠くない?」
「…………」
「皇さま?」
「………」
「………お嬢様」
お、反応した。
面白いな、これ。
このワード、使える。
すーと『お嬢様』への背後まで移動して。
耳元へ昔のように、話しかけた。
「お背中、流しましょうか」
「………っ」
途端、ビクンて反応して。
たぶん咄嗟に振り返ったのだろう、引っ込みのつかないまま、耳まで真っ赤にして、涙目になってる。
「は、ハイセ……っ、あんた」
「はい?」
あくまで『執事』のように、にこりと首を傾げて微笑んだ。