第12章 溺愛執事の恋愛事情
「ハイセ……っ」
ハイセ。
ハイセ。
「ほんとに夢じゃない?消えない?いなくならない?」
「頼まれたって離してやらない」
「ほんとに?」
「………ほんと」
ハイセの、笑顔。
本物のハイセ。
ぬくもりも。
声も。
全部、ハイセだ。
━━━━━ハイセ。
好き。
大好き。
愛してる。
言葉なんかじゃ足りない。
言葉じゃ伝えきれない。
だから。
だから。
ハイセのネクタイへと手を掛け引っ張れば。
ぐんと近付くハイセとの距離。
自分からハイセの唇へと自分のそれを重ね合わせた。
「好きよ、ハイセ」
驚きに揺れるその表情も。
だけどすぐに戻る、崩れないその姿勢も。
上がる口角も、目元も全部。
全部。
大好き。
「足りないな」
「うん」
あたしも、足りない。
顔を上げて、目を閉じた。
たくさん、キスをして。
どちらのものかわからない唾液が口から流れても。
呼吸が、苦しくなっても。
離れない。
離さない。
角度を変えて何度でも、重ねあった。
貪る、って表現が、ぴったりなくらいに。
獣のようにお互いの唇を夢中で貪った。
両腕を首に回し爪先立ちになっていた体はいつの間にかハイセに抱き上げられ、ハイセを見下ろすように唇を合わせる。
心地いい、ハイセの腕。
軽々とあたしを持ち上げる、逞しいハイセの腕。
全部が、あたしを甘く酔わせていく。
そう。
ベッドへと体が投げ出された事実にも、気付かないくらいには。
「……は…っ、皇」
余裕の、ない顔があたしを見下ろす。
獣みたいに、あたしを欲しがる瞳。
充血する、野生の瞳。
同じようにハイセの瞳にうつるあたしの顔も、瞳も。
ハイセのそれと同じで。
唾液と一緒に喉が、鳴いた。
「………っん、━━━ッッ」
久しぶりの、感覚。
ハイセの舌が、肌を這うだけで。
指先が、触れるだけで。
ぞくぞくする。
全身の肌が、粟立つ。
「声、隠さないで皇。聞きたい。皇の声も顔も全部、感じたい」
「……はい、せ……っ」